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「賞与(ボーナス)」を全額ローンの繰り上げ返済に回すのは正解?FPが教える夏の家計防衛術

「賞与(ボーナス)」を全額ローンの繰り上げ返済に回すのは正解?FPが教える夏の家計防衛術

多くの企業で夏のボーナス(賞与)が支給される6月。まとまったお小遣いをもらったような嬉しさがある反面、マイホームを購入したばかりの方や、これから購入を控えている方の中には、「このボーナスを全額、住宅ローンの繰り上げ返済に回して、少しでも利息を浮かせた方がいいのだろうか?」と考える方も少なくありません。

確かに、繰り上げ返済は借入元金を直接減らすことができるため、総返済額を減らす「確実な資産運用」とも言えます。

しかし特に現在の経済環境において「ボーナスを全額繰り上げ返済に回すこと」は、必ずしも正解とは言えません。下手をすると、家計の防衛力を著しく低下させ、将来の選択肢を狭めてしまうリスクすら孕んでいます。

今回は、夏のボーナス時期だからこそ知っておきたい、賢いお金の振り分け方と家計防衛術について解説します。

繰り上げ返済の「メリット」をおさらい

まずは、繰り上げ返済が持つ本来の効果を確認しておきましょう。繰り上げ返済には、毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」と、返済期間を短くする「期間短縮型」の2種類がありますが、どちらも以下のメリットがあります。

  • 支払う利息を確実に減らせる 繰り上げ返済したお金は、すべて「元金の返済」に充てられます。そのため、その元金にかかるはずだった将来の利息を丸ごとカットすることができます。

  • 精神的な安心感が得られる 借金(ローン)の残高が減っていくこと、あるいは完済までのカウントダウンが早まることは、心理的に大きなゆとりをもたらします。

一見するとメリットしかないように思えますが、なぜ「全額回すのは危険」なのでしょうか。

全額繰り上げ返済に回してはいけない3つの理由

住宅ローンは、数あるローン(自動車ローンやカードローンなど)の中で、「最も金利が低く、かつ返済期間を長く設定できる、極めて特別な借金」です。この特殊性を理解しないまま現金をローン返済に換えてしまうと、次の3つの罠に陥ります。

1. 現金は「一度返済すると二度と引き出せない」

家計管理において最も重要なのは、手元の「流動性(すぐに使える現金)」です。 ボーナスをすべて繰り上げ返済に回した直後に、例えば病気や怪我で収入が減ったり、家電が同時に壊れたり、車の買い替えが必要になったりした場合、銀行に「こないだ返済した分を一度返してください」と言うことはできません。結局、住宅ローンよりはるかに金利の高い「マイカーローン」や「目的別ローン」を組む羽目になり、トータルの支出が増えてしまうケースが後を絶ちません。

2. 「金利ある世界」への突入と運用のバランス

近年の金利動向を見ても、日本の金利は緩やかに上昇の兆しを見せています。とはいえ、依然として変動金利の多くは0.3%〜0.5%前後の低水準が続いています。 もし、0.5%の住宅ローンを減らすために100万円を使うのであれば、その100万円を「新NISA」などの税制優遇制度を活用し、年利2%〜3%の手堅い投資信託などで運用した方が、長期的な資産形成としては効率が良くなる可能性が十分にあります。

3. 「教育費のピーク」を計算に入れていますか?

子育て世帯にとって、人生最大の資金の壁は「高校・大学の進学時期(15歳〜22歳頃)」にやってきます。 子どもが小さいうちに「利息がもったいないから」とボーナスをどんどん返済に回してしまうと、最も現金が必要な大学入学時に手元資金が枯渇し、教育ローン(金利2%〜4%前後)を借りる事態を招きかねません。

夏のボーナス「黄金の振り分け比率」

では、支給されたボーナスはどのように分配するのが家計防衛の上で理想的なのでしょうか。FPが推奨する基準は、以下の「3つに分けるバランス」です。

① 【40%】生活防衛資金・直近の教育費(貯蓄)

まずは最優先で、手元の現金を厚くします。会社員の目安として、「毎月の生活費の6ヶ月分〜1年分」の現金が口座にない場合は、ボーナスの半分近くをこの防衛資金の補填に回してください。すでにこの防衛資金が十分に貯まっている場合は、10年以内に確実に使う「子どもの教育費」として別口座へ隔離します。

② 【40%】将来への投資(新NISAなど)または「維持費の積立」

次に、将来のお金を増やすための原資、あるいは家を購入した後に必ず発生する「固定資産税」や「住まいの修繕積立金」としてストックします。もし「どうしても繰り上げ返済がしたい」という場合は、この枠(全体の4割まで)の範囲内で行うようにルール化しましょう。

③ 【20%】今を楽しむためのお金(自己投資・ご褒美)

家計を締め付けすぎると、家づくりのモチベーションも家族の笑顔も維持できません。全体の2割程度は、家族での旅行、家具の買い替え、日頃の頑張りへのご褒美として気持ちよく使い切ることも、健全な家計を長く維持するための立派な防衛策です。

住宅ローン控除(減税)の期間中は特に慎重に

もしマイホームを購入してまだ13年(または10年)の「住宅ローン控除」の期間内である場合、繰り上げ返済の優先度はさらに下がります。

住宅ローン控除は、年末時点のローン残高の0.7%(※入居年や物件の省エネ性能により上限は異なります)が所得税や住民税から控除される制度です。もし自分が借りているローンの金利が0.5%であれば、「支払っている利息よりも、戻ってくる税金の方が多い(逆ざや状態)」になっているケースがあります。

この期間中に慌てて繰り上げ返済をして残高を大幅に減らしてしまうと、本来受け取れるはずだった税金の還付額まで減ってしまうことになります。控除期間が終わるまではじっと手元に現金を貯めておき、控除が終わったタイミングでまとまった額を返済する「期間終了後のドカン返済」を視野に入れるのが賢い戦略です。

編集長からのアドバイス

「借金は早く返さなければならない」という真面目な考え方ほど、時に現代の複雑なマネープランにおいては裏目に出ることがあります。家づくりや購入後の暮らしにおいて最も強い味方になってくれるのは、銀行の通帳にある「いつでも動かせる現金」です。

夏のボーナス明細を手にしたときは、まず「我が家の貯蓄額はライフプランに対して適正か?」を振り返る機会にしてください。

低金利の恩恵を最大限に活かしつつ、手元の現金をしっかり守る。この「守りの姿勢」こそが、これからのインフレや金利上昇局面を乗り切るための最大の家計防衛術となります。

 

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