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セットバック・私道・越境:“契約前に聞くこと”完全メモ
土地を見に行ったとき、前面道路が少し狭い。
隣地との境に塀が食い込んでいる気がする。
そんな“ちょっとした違和感”を放置したまま契約すると、
あとで思いがけない費用やトラブルに発展します。
不動産の現場で多いのが、「セットバック」「私道」「越境」。
どれも専門用語っぽく聞こえますが、
契約前にポイントを押さえておくだけで、後悔を防げます。
セットバック ― 道路が狭い土地の落とし穴
建築基準法では、道路の幅が4メートル未満の場合、
建物を建てるときに道路中心から2メートル後退する必要があります。
これがセットバック。
たとえば道路幅が3メートルなら、片側が0.5メートル下がる計算です。
その部分は自分の土地でも“道路扱い”になるため、塀を建てられず、建築面積にも含められません。
問題は、この面積が課税や売買のときには土地面積に含まれること。
つまり、登記簿上100㎡あっても、実際に使えるのは90㎡かもしれない。
この差を知らずに購入すると、「思ったより家が小さくしか建てられない」という事態になります。
→ 購入前に市役所で「道路種別」と「セットバック要否」を確認しておくこと。
私道 ― 持分・通行・掘削の3点セット
私道とは、一般の公道ではなく、個人や数人で所有している道路。
“通れるから安心”と思いがちですが、権利関係が整理されていないケースも少なくありません。
最低限チェックしておきたいのはこの3つ。
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持分:自分もその私道の所有者になるのか
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通行承諾:他人の私道なら正式な承諾書があるか
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掘削承諾:上下水道・ガスなどの配管を通す許可があるか
私道は、後になって“通れない・掘れない”となると致命的。
特に古い住宅街では、前面道路が私道であることに気づかず契約してしまう例が多いです。
登記簿や公図を見ても不明な場合は、仲介会社に「私道負担・承諾関係を文書で確認したい」と伝えてください。
越境 ― “数センチ”が大問題になることも
隣地のブロック塀や屋根の樋、エアコンの室外機。
それらが境界線を越えていると、「越境」と呼ばれます。
たとえ数センチでも、所有権の問題になるのがこの世界。
特に古い住宅地では、塀を互い違いに作っていたり、登記図と現地がずれていることも多いです。
境界が曖昧なまま引き渡すと、将来の建替えや売却時にトラブルの種になります。
理想は、確定測量図で現況を確認し、越境がある場合は「どちらの責任で是正・維持するか」を契約書に明記すること。
“現況のまま”というあいまいな言葉は避け、将来的な撤去や修繕の取り決めを残しておくと安心です。
現地でわかること、現地ではわからないこと
土地を歩けば、道路の幅や塀の位置は目で見てわかります。
ただし、セットバックの要否や私道の権利関係は現地だけでは判断できない。
役所・法務局・売主の資料を突き合わせることで初めて全体が見えます。
見た目が整っている土地ほど、書類を軽く見がちです。
でも、整って見えるほど“見えない負担”が潜んでいることもあります。
契約前に確認しておきたい質問リスト
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前面道路の種別と幅員
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セットバックが必要か、その面積はどれくらいか
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前面道路の所有者と持分割合
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通行・掘削の承諾は文書であるか
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境界標の位置と確定測量図の有無
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越境がある場合の扱い(撤去・承諾・現況維持)
この6項目を“契約前チェックリスト”として控えておけば、
ほとんどのトラブルは事前に防げます。
まとめ
土地の魅力は、価格や立地だけでは測れません。
狭い道、古い塀、曖昧な境界線——
そこにこそ、後から効いてくるリスクが潜んでいます。
契約書にサインする前に、“本当に使える土地か”を一歩深く確かめる。
それだけで、将来の安心度は大きく変わります。