blog
建築会社の選び方:相見積“比較不能”を防ぐ仕様書の作り方
家づくりで複数の建築会社に見積もりを依頼したのに、
出てきた数字がバラバラで比べようがない——。
そんな声をよく聞きます。
「この会社は坪単価60万、あっちは70万。でも、どこまで含まれてるの?」
仕様や前提条件がまちまちだと、金額だけを見ても意味がありません。
比較できない相見積は、むしろ判断を難しくしてしまいます。
この記事では、“比較できる見積もり”を取るための仕様書の作り方を、
実務経験に基づいてわかりやすく解説します。
後から「聞いてなかった」「そんなはずじゃなかった」を防ぐための、
最初の一歩として読んでください。
「見積もりを取ったのに、比べられない」
「三社に相見積をお願いしたのに、金額の根拠が全然違って混乱してしまった」——
家づくりを始めた人の多くが、最初にぶつかる壁です。
A社は坪単価60万円、B社は70万円。
数字だけ見ればA社が安いように思えても、
含まれている内容をよく見ると、片方には外構が入っていない、
もう片方は断熱性能が高く、設備もワンランク上。
もはや“別の家”の話をしているような状態です。
金額の比較ができないのは、条件の比較ができていないから。
そして、その条件をそろえるために必要なのが「仕様書」です。
仕様書を作る目的
仕様書は、建築会社ごとに異なる“前提条件”を揃えるための基準表です。
間取りやデザイン以前に、どんな素材・設備・性能を求めるのかを明確にすることで、
初めて見積の「精度」と「比較の意味」が生まれます。
仕様が曖昧なまま相見積を取ると、
-
後から追加費用が発生する
-
契約後にグレードが下がる
-
打合せのたびに判断疲れする
といったトラブルの温床になります。
仕様書は、“安さ競争”ではなく“納得競争”に変えるための道具です。
比較できる仕様書の中身
仕様書づくりの目的は「抜けのない比較表をつくること」。
よくある「坪単価」や「本体価格」では読み取れない部分を、
細かく項目化しておくと、会社ごとの姿勢が浮き彫りになります。
| 分類 | チェックすべき内容の例 |
|---|---|
| 構造・基礎 | 木造軸組か2×4か、基礎の仕様、耐震等級 |
| 断熱・気密 | 断熱材の種類・厚み、窓の性能、気密測定の有無 |
| 外部仕上 | 屋根・外壁・サッシ・玄関ドアの仕様 |
| 内部仕上 | 床・壁・天井材、建具、照明、収納計画 |
| 設備 | キッチン・浴室・トイレ・給湯器のメーカーとグレード |
| 諸経費 | 設計費、現場管理費、仮設工事費、確認申請費など |
| 別途工事 | 外構、地盤改良、カーテン、エアコン、登記費用など |
| 保証・メンテ | 構造・防水保証、定期点検、アフター対応の範囲 |
こうして“共通の物差し”を用意しておけば、
価格差の理由も、会社ごとの得意分野も見えてきます。
専門家を交えるとブレが減る
施主だけで仕様をまとめようとすると、
どうしても「抜け」や「曖昧な表現」が残ります。
中立的な立場の設計士や住宅コンサルに仕様書作成をサポートしてもらうと、
実現可能性やコスト感を踏まえた精度の高い比較ができます。
また、「施主の要望を正確に言語化できる」という点でも価値があります。
仕様書を作る過程そのものが、家づくりの軸を定める時間になります。
「安さ」より「理由のある価格」
同じ仕様で見積を取っても、会社によって差は出ます。
仕入れ力、施工体制、保証内容、担当者の対応力など、
その会社の“哲学”が金額に反映されているからです。
安い会社が悪いわけではありません。
ただし、「なぜ安いのか」「何を省いているのか」を説明できるかどうか。
その透明性こそ、信頼できる会社かどうかを見分ける一番の指標です。
まとめ
-
相見積は“数”より“精度”
-
比較不能を防ぐには、仕様をそろえる
-
自分で作れない場合は、第三者に手伝ってもらう
家づくりは一生に一度の大きな投資です。
仕様書を整えることは、金額を下げるためではなく、
後悔しない判断をするための準備。
焦らず、仕様を言葉にするところから始めてみてください。