blog
年末調整シーズン到来!住宅ローン控除の基本と、30代夫婦が知っておくべき「税金の戻り」のリアル
街がクリスマスムードに包まれる12月。会社にお勤めの方にとっては、少し面倒だけれど見逃せないイベント、「年末調整」の季節ですね。
特に、賃貸にお住まいの30代のご夫婦からよく聞かれるのが、「家を買うと税金がたくさん戻ってくるって本当ですか?」という質問。
いわゆる「住宅ローン控除」のことですが、これ、実は単に「家を買えばお金がもらえる」という単純な話ではありません。制度は少しずつ変わっていますし、年収や借り入れる額、そして選ぶ家の性能によって、「戻ってくる額」は驚くほど変わります。
今回は、数字や制度の話が少し苦手な方でも「我が家の場合はどうなるの?」とイメージできるよう、住宅ローン控除の「基本」と「リアル」をお話しします。
「家を買うと税金が戻る」の正体
まずは、そもそも住宅ローン控除とは何か、というお話から。正式名称は「住宅借入金等特別控除」といいます。名前が長いので、ここでは住宅ローン控除と呼びますね。
ざっくり言うと、「年末時点での住宅ローンの残高の0.7%が、その年の所得税(や住民税)から差し引かれて戻ってくる」という制度です。期間は新築住宅なら最長13年間。
「たった0.7%?」と思いましたか? でも、住宅ローンという借金は額が大きいです。例えば4,000万円のローン残高があれば、その0.7%は28万円。これが10年以上続くとなると、総額で数百万円規模の節税効果になります。生命保険料控除の還付金が数千円〜数万円であることを考えると、家計へのインパクトは桁違いです。
ただ、ここで大切なのは「誰でも満額戻ってくるわけではない」ということ。これが、私が相談室でお客様に必ずお伝えしている「リアル」な部分です。
年収600〜800万円世帯の「戻り」をシミュレーション
よくある誤解が、「ローン残高の0.7%が必ず現金で振り込まれる」というもの。実はこれ、あくまで「自分が払った税金の範囲内」でしか戻ってきません。
ペルソナとなる30代のご夫婦(世帯年収600〜800万円、お子様あり)のケースで考えてみましょう。
例えば、ご主人様の年収が500万円、奥様がパートで100万円、合わせて600万円の場合。 ご主人様が単独で4,000万円のローンを組んだとします。 計算上、4,000万円×0.7%=28万円が控除の「枠」になります。
しかし、年収500万円の会社員が年間で支払っている「所得税」は、扶養家族の人数にもよりますが、だいたい10万円〜15万円程度であることも多いのです。 「あれ? 枠は28万円あるのに、払っている所得税は14万円しかない…」 そうなると、所得税からは14万円しか戻ってきません。
「残りの14万円は損するの?」 いいえ、ここで登場するのが「住民税」です。所得税から引ききれなかった分は、翌年の住民税から差し引かれます。ただし、住民税からの控除にも上限(前年課税総所得金額等の5%、最高9.75万円)があります。
つまり、所得税で全額引ききれなくても住民税でカバーできることが多いですが、借入額が過大だったり、逆に夫婦ペアローンで一人当たりの借入額を分散させたりすることで、効率が変わってくるのです。このあたりは、一度源泉徴収票を見ながら計算してみないと、正確な数字は見えません。
「どんな家でもOK」は昔の話
これから所沢エリアで家探しをする皆さんに、絶対に知っておいていただきたいことがあります。 それは、「家の性能によって、控除を受けられる限度額が違う」という点です。
昔は「新築ならとりあえずOK」という時代もありましたが、今は違います。国は「環境に優しい家」を増やしたいと考えているため、省エネ性能が高い家ほど優遇されます。
具体的には、以下のように借入限度額(控除の対象となるローンの上限)がランク分けされています。(※子育て世帯・若者夫婦世帯の場合の優遇などもありますが、基本の考え方として)
-
長期優良住宅・低炭素住宅:優遇が一番手厚い
-
ZEH水準省エネ住宅:その次
-
省エネ基準適合住宅:標準的
-
その他の住宅(省エネ基準を満たさない):なんと、2024年以降の建築確認では、原則として住宅ローン控除が受けられません(※経過措置や例外を除く)。
これ、すごく怖くないですか? 「デザインが気に入ったから」「安かったから」と飛びついた新築が、実は今の省エネ基準を満たしていなくて、住宅ローン控除が0円だった…なんてことになったら、数百万円の損です。
所沢の建売住宅や注文住宅を見る際も、営業さんに「この家は住宅ローン控除のどの区分に入りますか?」と必ず聞いてください。もし即答できない担当者なら、少し注意が必要かもしれません。
「金利」と「控除」のいたちごっこ
もう一つ、お金のプロとして冷静にお伝えしたいのが、金利との関係です。
「住宅ローン控除で0.7%戻ってくるなら、金利が0.5%の変動金利で借りれば、実質プラス(逆ざや)になるのでは?」 そんな裏技のような話、ネットで見かけたことはありませんか?
確かに、計算上はそうです。金利0.5%で利息を払い、国から0.7%戻ってくれば、差引0.2%分得をします。 しかし、今は「金利のある世界」が戻ってきつつあります。固定金利は以前より上がっていますし、変動金利もいつ上がるかわかりません。
もし変動金利が0.8%、0.9%と上がっていけば、控除の0.7%を上回ってしまいます。「税金が戻ってくるから大丈夫」と安易に予算を上げてしまうと、控除期間が終わる13年後(あるいは金利上昇時)、家計が苦しくなるリスクがあります。
住宅ローン控除はあくまで「支援策」です。それをあてにしてギリギリのローンを組むのではなく、「戻ってきたお金は、固定資産税の支払いや将来の修繕費積立に回す」くらいの堅実な感覚でいるのが、私たちの子育て世代にはちょうどいいと私は思います。
子育て世帯にとっての「戻り」の使い道
私が担当させていただくお客様には、この還付金を「教育費の先取り貯金」と捉えることをおすすめしています。
お子様が幼稚園や小学校低学年の今は、まだ教育費がそこまでかかりません。でも、中学、高校、大学と進むにつれて、桁が変わるようにお金が必要になります。 住宅ローン控除が受けられる13年間は、ちょうどお子様が大きくなるまでの期間と重なることが多いです。
年末に戻ってきた数十万円。旅行や家具にパーッと使いたくなる気持ち、すごく分かります(私もそうですから!)。でも、その半分だけでも「これは10年後の塾代」と別口座に移しておけたら、将来の安心感は全く違ったものになるはずです。
書類一枚から始まる、未来のライフプラン
年末調整の書類一枚から、話がずいぶん大きくなってしまいました。 でも、家を買うということは、単に「住む場所を変える」だけでなく、こうやって「税金との付き合い方」や「長期的な家計の戦略」を変えるきっかけでもあります。
「難しくてよく分からない」「自分の年収だといくら戻るの?」と思われたら、ぜひ私たちに声をかけてください。源泉徴収票をお持ちいただければ、具体的なシミュレーションも可能です。
所沢エリアの物件情報だけでなく、こうした「買った後のお金の話」も含めて、皆さんの家づくりをサポートしたいと思っています。 寒さが厳しくなる季節です。温かい飲み物でも飲みながら、ご夫婦で少しだけ「未来のお金」の話、してみませんか?