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冬の15時が勝負?所沢で土地を探すなら「日当たり」と「前面道路」をこの時期に確認すべき理由
12月に入り、所沢もぐっと冷え込んできましたね。航空公園の木々もすっかり葉を落とし、冬の訪れを感じます。 この時期になると、不動産会社への問い合わせやモデルハウスへの来場者数は少し落ち着く傾向にあります。「寒い中、土地を見て回るのは億劫だ」「年が明けて暖かくなってから本格的に動こう」と考える方が多いからでしょう。
しかし、「土地を探すなら、絶対に冬、それも12月から1月がベスト」です。
なぜなら、一年で最も条件が悪い時期だからこそ、その土地が抱える「真のリスク」があぶり出されるからです。夏の日差しが降り注ぐ時期に「明るくて良い土地だ」と感じるのは当たり前。しかし、私たちが一生住む家は、冬の寒さや暗さとも付き合っていかなければなりません。
今回は、失敗しない土地選びのために、あえてこの厳しい季節に確認していただきたい「日当たり」と「前面道路」のチェックポイントについて、少し専門的な法規制の話も交えながらお話しします。これを読めば、寒い中の土地見学が、将来の安心を買うための重要なミッションに見えてくるはずです。
不動産のプロが「冬の15時」に現地へ向かう理由
土地の良し悪しを判断するとき、皆さんは何時頃に現地に行かれますか? 多くの方は、休日の午前中、あるいはランチの後の13時頃に行かれることが多いのではないでしょうか。不動産屋の案内も、明るい印象を与えたいので、その時間帯を設定することが多いものです。
しかし、私がお客様に土地をご案内する場合、あるいは自分で仕入れの調査をする場合、あえて「冬の15時」に現地を確認しに行くことがあります。
1. 一年で最も長い「影」を確認できる
ご存知の通り、冬至(12月22日頃)前後は、太陽の南中高度が一年で最も低くなります。太陽が低いということは、それだけ建物の影が長く伸びるということです。
夏場であれば、南側に2階建ての家があっても、太陽が高い位置にあるため、影は短く、北側の土地にも十分に日が当たります。しかし、冬は違います。南側の家の影がぐーんと長く伸び、北側の土地(つまりあなたが検討している土地)をすっぽりと覆ってしまうことがあるのです。
特に午後3時(15時)という時間は重要です。 西に傾きかけた太陽が、南西方向からの日差しを届けようとする時間帯。この時間に、検討している土地のリビング予定地に日が当たっているか、それとも隣家の影になって真っ暗か。これが、その土地の「日当たりポテンシャル」の最低ラインです。
冬の15時に日が当たっていれば、その土地は一年中明るいと言えます。逆に、この時間に真っ暗で寒々しいのであれば、春や秋の夕方も薄暗くなる可能性が高い。図面上の「南向き」という文字だけでは分からないリアルが、そこにあります。
2. 底冷えと湿気の「感覚」を掴む
冬の午後は、気温が下がり始めます。日当たりが悪い土地、特に風通しが悪く湿気が溜まりやすい土地は、この時間帯に特有の「底冷え」を感じます。 コンクリートブロックや擁壁に苔が生えていないか、地面がジメジメしていないか。これらは夏場だと乾いていて気づきにくいのですが、冬場はごまかしが利きません。
「南道路」神話の落とし穴と所沢の事情
「日当たりが良い土地」というと、多くの人が「南道路の土地」を希望されます。 南側に道路があれば、将来的に目の前に建物が建つリスクがなく、日照が確保される。これは確かにセオリーです。しかし、所沢エリアで土地探しをする場合、必ずしも「南道路=正解」とは限りません。
土地の価格とコストパフォーマンス
まず、南道路の土地は人気があるため、価格が割高に設定されています。所沢市内の人気エリアであれば、坪単価が数万円〜十万円単位で変わることも珍しくありません。35坪の土地であれば、数百万円の差になります。
予算5,000万円〜7,000万円で土地と建物を計画されている方にとって、土地だけで数百万円上がるのは大きな痛手です。その分、建物の予算を削らなければならなくなります。
「北道路」でも明るい家は建つ
私が実務でよく提案するのは、あえて「北道路」の土地を検討することです。 「北道路は暗い」と思われがちですが、実は法規制の恩恵を受けやすいというメリットがあります。
建築基準法には「北側斜線制限」というルールがあります。これは、北側の隣地の日当たりを確保するために、建物の北側の高さを制限するものです。 あなたが北道路の土地を買う場合、あなたの土地の「北側」は道路です。道路には日当たりを確保する必要がない(厳密には道路斜線制限がありますが、緩和されやすい)ため、建物の配置や屋根の形状を自由に決めやすくなります。
一方、南側隣地(あなたの土地の南側にある家)は、あなたの日当たりを守るために北側斜線制限を受けています。つまり、南側の家は、北側(あなたの土地側)に向けて屋根を低くしたり、建物を離したりしなければならないのです。
この法的ルールと、適切な吹き抜けや2階リビングの設計を組み合わせれば、北道路の土地でも十分に明るい家は建てられます。冬の現地見学で「南側の家との距離感」と「影の落ち方」さえしっかり確認できれば、割安な北道路の土地は「買い」の判断ができるのです。
前面道路4mの攻防。「セットバック」を自分ごととして捉える
次に、土地選びで絶対に妥協してはいけないポイントについてお話しします。それは「前面道路」です。 ペルソナとなる皆さんは「前面道路4m以上、2台駐車可」をご希望されていますが、これは非常に賢明な判断です。
所沢市内、特に古くからある住宅街では、前面道路が4m未満の狭い道がまだまだ多く残っています。行政書士として道路の調査をすることも多いのですが、ここで注意すべきなのが「セットバック(道路後退)」です。
建築基準法第42条第2項道路(みなし道路)
建築基準法では、原則として幅員4m以上の道路に接していないと家を建てられません。しかし、昔からある道で4m未満のものについては、「道路の中心線から2m下がった線を道路境界線とみなす」という特例があります。これを「2項道路」と呼びます。
もし気に入った土地の前面道路が3.5mしかなかった場合、中心から2m確保するために、あなたの土地を道路として提供(セットバック)しなければなりません。 「たかだか数十センチでしょ?」と思うかもしれませんが、35坪前後の土地で、間口が10mあったとします。道路中心から25cm下がる必要があるとすれば、10m×0.25m=2.5平米。約0.75坪が「使えない土地」になります。
さらに重要なのは、そのセットバック部分には塀も門扉も作れませんし、建ぺい率・容積率の計算上の敷地面積からも除外されます。 「35坪の土地を買ったつもりが、有効面積は34坪ちょっと。そのせいで希望の4LDKが入らない」 「駐車場の奥行きが足りず、ミニバンがはみ出してしまう」 こうしたトラブルは、図面だけ見ていると気づきにくいのです。
冬の道路事情と「4m」の重み
また、冬場ならではの視点として、「雪」と「視界」の問題があります。 所沢でも年に数回、雪が積もることがあります。前面道路が狭いと、雪かきをした雪の置き場がなくなり、道幅がさらに狭くなります。4mギリギリの道路で雪が残っていると、車同士のすれ違いは不可能です。
さらに、冬は日が短く、17時には真っ暗になります。街灯が少ない狭い路地での車庫入れは、心理的にもストレスがかかります。毎日の通勤・通園で車を使う奥様にとって、「すれ違いができるか」「夜でも見通しが良いか」は、生活の質に直結する問題です。
私が担当したお客様で、「土地は気に入ったけれど、前面道路が3.8mで、向かいの塀が高い」という物件を諦めた方がいらっしゃいました。その後、4.5mの公道に面した土地を購入されましたが、「毎日ストレスなく車庫入れができる。あの時妥協しなくて本当によかった」とおっしゃっています。 道路は、自分の力では変えられません。だからこそ、最初に見極める必要があるのです。
「用途地域」が教える未来の環境
土地を見に行ったとき、現時点での日当たりだけを見て安心していませんか? 宅建士として皆さんに強くお伝えしたいのは、「将来、隣に何が建つか」を予測することの重要性です。これを読み解く鍵が「用途地域」です。
第一種低層住居専用地域の安心感
所沢の住宅地でよく見かける「第一種低層住居専用地域」。これは、最も厳しい規制がかかる地域です。 高さ制限(10mまたは12m)があり、基本的には2階建て、あるいは低めの3階建てまでしか建ちません。コンビニや店舗も原則として建てられないため、静かな住環境が守られます。
このエリアであれば、南側の隣地が今は駐車場や畑であっても、将来いきなり高いマンションが建って日差しが奪われる、というリスクは極めて低いです。 逆に、「第一種住居地域」や「近隣商業地域」などの場合、今は低い建物しかなくても、将来的には中高層のマンションやビルが建つ可能性があります。
「冬の15時の日当たり」を確認する際、合わせて不動産屋にこう聞いてください。 「この土地の南側は、用途地域は何ですか? 将来、どのくらいの高さの建物が建つ可能性がありますか?」 この質問に即座に、法規制に基づいて答えられる担当者なら信頼できます。
土地を見極めるための「冬の現地確認リスト」
最後に、これから土地を見に行く皆さんのために、私が実務で使用しているチェックポイントを簡易版にしてお伝えします。ぜひスマホにメモして、現地で確認してみてください。
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訪問時間: 15:00〜15:30に現地に立つ。
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影の確認: 検討地の「リビング予定位置」と「庭予定位置」に日が当たっているか。南側の建物の影がどこまで伸びているか。
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隣家の窓位置: 葉が落ちた冬の木々の隙間から、隣家の窓の位置がよく見えます。自分の家の窓と「お見合い」にならないか確認するチャンスです。
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前面道路の交通量と幅員: 夕方の帰宅時間帯、抜け道として使われていないか。自分の車ですれ違いが可能か。
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近隣の雰囲気: 冬の夕方は静かです。近隣から聞こえる生活音や、室外機の音などが気にならないか。
まとめ:寒い日の努力は、温かい暮らしへの投資
不動産購入には、「千三つ(せんみつ)」という言葉があります。千の物件情報があって、本当に良いと思えるのは三つくらい、という意味で使われることもあります(本来は話が嘘くさいという意味ですが、不動産業界では良い物件の希少性を指してこう言うこともあります)。
それくらい、完璧な土地と巡り合うのは難しいものです。 だからこそ、リスクが見えやすい「冬」に動くことに価値があります。
寒空の下、メジャーを持って道路幅を測ったり、じっと影の動きを観察したりするのは、決して楽しい作業ではないかもしれません。しかし、その「寒さ」を体感した時間こそが、ご家族が将来、「冬でもポカポカして気持ちいいね」「この土地を選んでよかったね」と笑い合うための、最も確実な投資になります。
私たちお家の買い方相談室では、法規制のチェックや日当たりシミュレーションも含め、専門家の視点で土地探しをサポートしています。 「この土地、気になるけど法的に大丈夫?」「将来の日当たりは?」といった疑問があれば、いつでもご相談ください。難しい法律の話も、わかりやすく噛み砕いて解説させていただきます。
まずは、今週末の15時。 防寒対策をしっかりして、気になっているあの土地へ、もう一度足を運んでみませんか?