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ランドリールームは本当に必要?共働き夫婦が「洗濯動線」で後悔しないための間取り術
SNSで大流行中の「ランドリールーム」。 「家を建てるなら絶対欲しい!」と憧れている方も多いのではないでしょうか。
でもあえて心を鬼にして問いかけます。 「そのランドリールーム、あなたの暮らしに本当に必要ですか?」
実は、「流行りだから」という理由だけで採用し、住んでから「LDKをもっと広くすればよかった」と後悔するケースが少なくありません。 特に、限られた坪数(30坪前後)で建てる場合、専用の部屋を作ることは、他のスペースを圧迫するリスクがあります。
共働き子育て世帯に必要なのは、広い「部屋」ではなく、秒で家事が終わる「動線」です。 今回は、ランドリールームを作らずに、「脱衣所+1畳」の工夫だけで洗濯ストレスをゼロにする、現実的で最強の間取り術を解説します。
「ランドリールーム」という名の贅沢品
まず、ランドリールームの定義を確認しておきましょう。 一般的には、「洗う・干す・たたむ・アイロンがけ」を一つの部屋で完結できる、3畳〜4畳ほどの専用スペースを指します。
確かに便利そうですが、所沢エリアで一般的な30坪〜32坪(約100平米)の家で、これを実現しようとするとどうなるでしょうか。 3畳〜4畳のスペースを確保するために、何かを削らなければなりません。
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LDKを20畳から16畳に縮小する
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1階のファミリークローゼットを諦める
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玄関を狭くする
もし、あなたが「洗濯」という家事が大好きで、アイロンがけが趣味なら、LDKを削ってでも作る価値はあります。 でも、多くの共働き夫婦にとって、洗濯は「なるべく時間をかけずに終わらせたい作業」のはずです。
嫌いな家事のために、家族がくつろぐリビングを狭くするのは本末転倒です。 私が提案したいのは、専用の「ルーム(部屋)」を作るのではなく、既存のスペース(脱衣所や洗面所)を進化させた「ランドリースペース(機能)」を持たせるという考え方です。
共働き夫婦の現実は「夜洗濯」と「室内干し」
間取りを考える前に、ご自身の洗濯スタイルをシミュレーションしてみましょう。 共働きのご家庭の場合、平日の洗濯スケジュールはこんな感じではないでしょうか。
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夜、お風呂に入った後に洗濯機を回す。
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寝る前に干す(もちろん室内)。
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翌朝、または翌日の夜に取り込んでしまう。
つまり、「外に干す」という行為自体が、平日はほぼ発生しません。 さらに言えば、花粉の時期や梅雨、ゲリラ豪雨のリスクを考えると、休日でさえも「室内干し派」が増えています。
となると、必要なのは「日当たりの良い南側のランドリールーム」ではなく、「脱衣所のすぐ近くにあって、除湿機やサーキュレーターが効く、夜でも干せる場所」です。
30坪で叶える「脱衣所兼用ランドリー」の作り方
では、具体的な間取りのアイデアをご紹介します。 私が最も推奨しているのは、「洗面脱衣室を少しだけ広くする(+1畳)」というプランです。
通常の洗面脱衣室は2畳(1坪)が標準です。ここに洗濯機と洗面台を置くと、人が着替えるスペースしか残りません。 これを3畳(1.5坪)に広げてみてください。 たった1畳増やすだけで、世界が変わります。
1. 天井には「昇降式物干し」を2本
まず、天井に「ホスクリーン」や「ホシ姫サマ」などの室内物干しユニットを設置します。ポイントは2本設置すること。 4人家族の洗濯物は意外と多いです。1本では足りません。 使わない時は天井に収納できるタイプなら、見た目もスッキリします。
2. 「乾太くん」という最強の時短家電
もし都市ガスエリア(所沢の市街地など)で家を建てるなら、ガス衣類乾燥機「乾太くん」の導入を強くおすすめします。 これがあれば、「干す」という作業自体がなくなります。 洗濯機から取り出して、上の乾燥機に放り込むだけ。1時間でフワフワに乾きます。 これこそが、共働き夫婦にとっての「真のランドリールーム」と言えるかもしれません。 初期費用はかかりますが、3畳の部屋を作る建築費に比べれば安いものです。
3. 除湿機専用のコンセントと置き場
室内干し派にとって、除湿機は必須アイテムです。 しかし、意外と忘れがちなのが「除湿機の置き場所」。 通路の真ん中に置いてコードが邪魔…なんてことにならないよう、洗濯物の真下に除湿機を置けるスペースと、専用のコンセントを計画しておきましょう。
「たたむ」を辞める勇気。「ファミクロ」との連結技
洗濯で一番面倒なのは、「洗う」ことでも「干す」ことでもありません。 乾いた山盛りの服を「たたんで、各部屋にしまう」作業です。 ここを解決しない限り、どんなに立派なランドリールームを作っても、家事は楽になりません。
そこでセットで考えたいのが、「ファミリークローゼット(ファミクロ)」です。
理想の動線:脱衣所 → ファミクロ(直結)
3畳の「脱衣所兼ランドリー」の隣に、2畳〜3畳のファミリークローゼットを配置し、扉一枚で行き来できるようにします。
この動線があれば、
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脱衣所のハンガーパイプで干して乾かす。
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乾いたら、ハンガーのまま隣のファミクロへ移動させる。
これだけです。「たたむ」作業は消滅します。 下着や靴下など、ハンガーに掛けないものだけ、ファミクロ内の引き出しにポイポイ放り込めばOK。 各個室に配って回る必要もありません。
朝の身支度も、顔を洗って、隣のファミクロで着替えて、リビングへ。 このスムーズな流れができると、忙しい朝のバタバタ劇が嘘のように静かになりますよ。
「洗面所」と「脱衣所」は分けるべき?
最近のトレンドとして、「洗面所と脱衣所を分けたい」という要望も増えています。 「娘がお風呂に入っている時に、パパが洗面台を使えないから」という理由ですね。
確かに便利ですが、30坪の家でこれをやると、それぞれのスペースが狭くなり、収納不足になりがちです。 予算とスペースに余裕がない場合は、無理に壁で仕切らず、「ロールスクリーンで仕切れるようにしておく」くらいが丁度いい塩梅です。
普段は開け放して広々と使い、必要な時だけ下ろす。 壁を作らない分、建築費も浮きますし、空調も効きやすくなります。 洗濯物を干すスペースとしても、一体化していた方が広く使えます。
失敗しないためのチェックポイント
最後に、ランドリー周りの間取りで後悔しないためのチェックリストをお渡しします。
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換気扇の位置: 洗濯物の真上に換気扇があると、空気の流れができて乾きが早くなります。
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窓は小さくていい: 採光のための大きな窓は、収納スペース(壁)を奪います。プライバシーの観点からも、高窓(天井近くの窓)にするのがおすすめです。
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作業台は必要?: 「アイロンがけ用のカウンター」を作る方がいますが、実際にそこでアイロンをかけますか? 物置になっていませんか? 折りたたみ式のアイロン台の方が、場所を選ばず便利かもしれません。
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コンセントの数と位置: 扇風機、サーキュレーター、除湿機、冬場のヒーター、ドライヤー、電動歯ブラシ…。洗面脱衣所は家電だらけです。多すぎるくらいで丁度いいです。
まとめ:家事は「動線」で減らせる
「ランドリールームを作れば家事が楽になる」というのは幻想です。 家事を楽にするのは、部屋の広さではなく、「無駄な動きを削ぎ落とした動線」です。
共働きで忙しい毎日を送る私たちにとって、家事の時間は「削減対象」です。 その浮いた時間で、子供とゆっくりお風呂に入ったり、夫婦で晩酌をしたり、早く寝たりする。 そのための「間取り」であることを忘れないでください。
もし、「今の図面で洗濯動線が良いか見てほしい」「30坪でファミクロを入れるにはどうしたらいい?」といったお悩みがあれば、ぜひお家の買い方相談室にご相談ください。